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幻想的な玉

久しぶりの新着玉はまたしてもちょいと面妖な昔レンズである。実は今回の玉は別のモノが先に手許に来ていたのだが距離計があわず調整中。お忙しいこともあるだろうし、苦戦されているかもしれず、やかましく催促するのも申し訳ないと思っていたら、「この値段ならよかろう」という額でセリにお出ましになった。

Hektor7.3cmF1.9(1933年、Black)
IMG_5442.jpg

調整中の玉が戻ってきてから同時に公開とも思ったが、試写してみたら「これは絶対使う頻度が増える」と確信したので公開することにした。

木村伊兵衛氏も愛用されたライカの初期レンズでXenon5cmF1.5が出るまでライカの最も明るい玉であった。73mmという焦点距離も開放F値1.9もいずれも中途半端な数値だが、営業生産できるギリギリ限度のスペックがたまたまこれになったというところだろうか。
レンズ構成はHektor5cmF2.5と同様の3群6枚、トリプレットの変形である。50mmが1930年から、73mmは1931年から製造開始していて73mmの方は1946年まで7,225本製造された。現在とは物価水準も為替レートも大きく異なるから参考にならないが、発売当時、日本では家が買えると言われたカメラ本体+Elmar50mmよりも高いレンズだったらしい。

この玉、ライカでも初期のレンズなのだが、相当な種類があるらしい。調べた中ではここが最も詳しく、その解説によると見た目の部分、つまり鏡胴だけでも

(1)オールブラック
(2)オールクローム、
(3)ピントリング下部がニッケル、他がブラックのツートン、マウント部がブラック
(4)ピントリング下部がクローム、他がブラックのツートン、マウント部がクローム
(5)ピントリング下部がクローム、他がブラックのツートンでマウント部がブラック
(6)ピントリングの中央部分のみブラックで上下がクローム、マウント部がクローム
(7)ピントリング全体がクローム、他がブラック

など7種類。
さらには、ヘリコイドも直進式と回転式が混在し、レンズブロックがネジ式で外れるか否か、など多種多様。最短撮影距離は1.5mだが、モノによっては1m以内まで寄れるとか、1.5mピッタリとか、かなりアバウトな感じである。こうした違いはシリアルナンバーでの偏りもなく、どうやら客からの要請に応えてかなりカスタマイズされたようで、いかにも受注生産式と思わせる。古いレンズだけに保存状態も含めた個体差が相当あるようで、手を出すこと自体がバクチみたいな感じもある。

この玉もハイライトが滲むクセ玉。それを好む人には絶大な人気を誇る玉のひとつで、WEB上を探索するとHektor7.3cmを持ち寄るオフ会などという物騒な集まりがあったり、「どうせ沼にハマるなら一人でも多く巻き込んで・・・」とか、かなり物騒な物欲刺激をしあっている様が観察できる・・・苦笑。

Diglight6周年の名残・・・笑。
R0075921.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + RICOH GXR
傷の多いSummarにも通じるような柔らかさが印象的・・・。


因みに今回入手した玉は1933年製の(1)オールブラック+直進ヘリコイド+最短撮影距離1.3mあたり、という仕様。試してはいないが多分レンズ・ブロックも分離できるタイプだ。絞り、距離、被写界深度を表示する銀色の象嵌に多少乱れはあるが、まぁよくここまで作り込みましたねぇと感心するレベルの工芸品である。
IMG_5443.jpg

外観は全体的にブラックペイントが擦れているが逆にそれが一種の迫力と味を醸し出している。出品者によると実測443g。フィルターはねじ込み39mm(E39)が使える。光学系はこの年代としてはじゅうぶんと思える状態だし、オトクに落とせた方だろう。
(実はこれより安い玉も暫く鎮座されているのだが、調整中の玉と外観は同じだし状態は今回入手したものの方がよさそうでポイントを使えばほぼ同額になることからこちらを選択した。)

筆おろしは11日(木)、Diglightで。
R0075904.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + RICOH GXR


開放F値1.9という大口径レンズだが、評判通り被写界深度は思ったより深い。ジャスピンは難しいがフォーカス・アシストがあるGXRなら絞り開放でも許容範囲に収めやすい印象だ。

もちろんモノクロの描写も申し分ない。
R0075943.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + RICOH GXR


Diglightのステージ上は当然ながら照明が行き届いていることもあって、確かに滲みはあるけど結構普通じゃん、とか思っていたのだが・・・

京急川崎駅の売店。ぐ・・・、滲みもボケ方もなかなか強烈。
R0075983.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + RICOH GXR

中央部分を拡大すると・・・。
H73_1.jpg
ボケとも滲みとも取れる微妙な崩れ方をしている。

さすがに開放で遠いところはゆるゆるだが、光のとらえ方は幻想的でよい雰囲気だと思う。
R0075980.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + RICOH GXR

X-E1にもこの休みで搭載してみた。夕方フラフラと出ていったのだが曇り空だったこともあるだろうが・・・。
DSCF7695.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + FUJIFILM X-E1
どうすればこうなるのか、と思う独特の絵である。

Hektor5cmF2.5でお馴染みのカエルの卵ボケ。同じレンズ構成で中望遠、やはり盛大に出る(笑)。
DSCF7739.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + FUJIFILM X-E1

もちろん、絞ればそれなりにシャープで軽くフレアが乗ったよい絵を出してくれる。
DSCF7701.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + FUJIFILM X-E1

ディスプレイで拡大してみて驚いた。
H73_2.jpg
画面中央近辺なのだが、指もなかなかきっちりと解像している。F4.5あたりだったと記憶している。

寄るとさすがに深度が浅くてX-E1では難しいが、これは比較的狙ったとおり。
DSCF7782.jpg
Hektor7.3cmF1.9 + FUJIFILM X-E1

合焦部分をアップにしてみると・・・
H73_3.jpg
なるほどと思った。


ちゃんとピントが合った部分は滲みもそこそこレベルなのだが、少し外れると途端に滲み始めているようだ。妙に眩しい感じのする幻想的な描写の秘密は被写体自身が光を発しているような滲みによるものらしい。面白い玉があったものである。好むか嫌うか二者択一的なクセ玉だが、どうやら私はこの玉と長いお付き合いになりそうな気がする。




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[ 2013/04/14 19:30 ] Camera | TB(0) | CM(2)

次は・・

素晴らしいレンズですねぇ・・。次はいよいよタン○ールですか?(爆)
[ 2013/04/20 08:10 ] [ 編集 ]

まさしく・・・

>うっちーさん

いい玉ですよ、本当に。
仰るとおり、ライカのビンテージ玉は残すところTの字だけになりました。
これは難関ですけどねぇ・・・。
あ、「エルマックスは?」というのは言いっこなしで・・・笑
[ 2013/04/20 10:56 ] [ 編集 ]

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